上野恩賜公園の象徴として、訪れる多くの人々を圧倒的な存在感で迎え入れる西郷隆盛像。明治維新の立役者として知られる西郷隆盛の銅像は、東京のランドマークの一つとして長年親しまれてきました。しかし、この銅像が建立された背景や、傍らに寄り添う愛犬の名前の由来、そして細部に隠された歴史的エピソードについては、意外と知られていない事実も少なくありません。
本記事では、上野恩賜公園西郷隆盛像の建立の経緯や歴史的背景、愛犬の名前の本当の由来、そして周辺の観光スポットやアクセス情報に至るまで、2026年現在の視点を交えて分かりやすく解説します。
上野恩賜公園西郷隆盛像の歴史と建立の経緯

上野恩賜公園の西郷隆盛像が一般に公開されたのは、明治33年(1900年)11月18日のことです。当時の東京において、私人でありながら朝敵とされた時期もあった西郷隆盛の銅像を建立する計画は、決して平坦な道のりではありませんでした。
西南戦争を経て逆賊とされていた西郷の名誉回復が進む中、旧薩摩藩士やかつての同志、そして全国の支持者たちの強い熱意によって銅像建立の運動が本格化しました。除幕式には皇族や当時の要人、全国から集まった数多くの人々が参列し、大きな話題となりました。
制作を手掛けたのは、日本の近代彫刻界を牽引した名匠・高村光雲です。全体の構図や西郷の力強い立ち姿、そして日常の一コマを切り取ったような自然な佇まいは、彫刻芸術としても極めて高い評価を受けています。
愛犬の名前は「ツン」!その意外な由来と犬種の特徴
西郷隆盛像といえば、飼い犬を連れている姿が印象的ですが、この犬の名前は「ツン」です。この愛犬に関するエピソードや名前の由来には、西郷自身の動物に対する深い愛情と、当時の薩摩の文化が色濃く反映されています。
ツンは薩摩犬(現在の鹿児島県原産の日本犬)のメスで、西郷がウサギ狩り(野うさぎ猟)の際にその優れた狩猟能力と精悍さに惚れ込み、当時の持ち主から譲り受けたと伝えられています。名前の「ツン」の由来については諸説ありますが、当時の薩摩における犬の呼び方や鳴き声、あるいは耳の形状や特徴にちなんだものであると言われています。
銅像のツンはふっくらとした愛らしい体型で描かれていますが、これは実際の薩摩犬のたくましい体格とはやや異なると指摘されることもあります。これには、銅像全体のバランスや親しみやすさを考慮した制作者の意図があったとされており、現在では「上野の西郷さんと犬」として親しまれる愛嬌の象徴となっています。
高村光雲の苦闘と銅像制作の裏側
西郷隆盛像の制作において、中心的な役割を果たしたのが彫刻家の高村光雲です。実は、銅像の顔立ちや体型の決定にあたっては、生前の西郷隆盛を知る関係者の間でも意見が分かれ、苦難の連続でした。
西郷は生前、自身の写真をほとんど残さなかったため、光雲は生存する親族や写真、似顔絵などを徹底的に研究し、粘土による試作を何度も繰り返しました。特に「どの角度から見ても威厳があり、かつ親しみやすい姿にするか」に苦心したと、光雲自身の回顧録にも詳細に記されています。
また、西郷像が軍服姿ではなく、あえて和服(浴衣姿)で散歩しているような日常的なスタイルで表現されている点も大きな特徴です。これは、権威主義的な軍人像ではなく、自然体で庶民に愛された西郷の人柄を後世に伝えるための演出であり、当時の人々に大きな感動を与えました。
【データ一覧】上野恩賜公園西郷隆盛像の基本情報と歴史的年表
ここでは、西郷隆盛像に関する主要なデータや、建立に至るまでの歴史的流れを分かりやすく表にまとめました。
| 時期・項目 | 内容・詳細 | 備考・主な実績 |
|---|---|---|
| 建立年月日 | 明治33年(1900年)11月18日 | 上野恩賜公園の山王台(現在の位置)で除幕式を挙行 |
| 制作者(像本体) | 高村光雲(彫刻家) | 日本近代彫刻の礎を築いた名匠 |
| 制作者(犬・ツン) | 後藤貞行(動物彫刻家) | 動物彫刻の第一人者として光雲を補佐 |
| 犬の名前・犬種 | ツン(薩摩犬・メス) | 西郷が愛用したウサギ狩りの名犬 |
| モチーフ・姿勢 | 狩猟に出かける際の日常的な和服姿 | 権威を誇示しない庶民派の姿を表現 |
周辺の観光スポットとアクセス情報
上野恩賜公園は、西郷隆盛像だけでなく、数多くの見どころが詰まった国内屈指の文化・観光エリアです。銅像を見学したあとにぜひ足を運びたい周辺のスポットや、アクセス情報を紹介します。
周辺には、東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、上野動物園など、日本を代表する文化施設が徒歩圏内に集結しています。また、春には桜の名所として日本全国から多くの観光客が訪れ、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。
アクセス情報:
JR・東京メトロ各線「上野駅」公園口から徒歩約5分。京成電鉄「京成上野駅」からも徒歩約7分と、抜群のアクセスを誇ります。
【上野恩賜公園西郷隆盛像】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:西郷隆盛像が軍服ではなく和服なのはなぜですか?
A1:生前の飾らない人柄や、リラックスして散歩を楽しむ日常の姿を表現するため、あえて羽織・袴の散策スタイルが採用されました。
Q2:連れている犬の「ツン」はオスですか、メスですか?
A2:ツンはメスの薩摩犬です。西郷隆盛が非常に可愛がり、愛犬家としてのエピソードが多く残されています。
Q3:銅像の除幕式には誰が参列したのですか?
A3:樺山資紀海軍大将をはじめとする旧薩摩藩関係者や、全国から集まった多くの支持者、遺族が参列し盛大に行われました。
上野恩賜公園の西郷隆盛像は、単なる歴史的記念碑にとどまらず、明治という激動の時代を生きた人々の情熱と、高村光雲らの卓越した芸術的職人技が結晶となった貴重な文化遺産です。
愛犬ツンと共に上野の森から東京の街を見守り続けるその姿は、時代を超えて今なお多くの人々に親しまれ、新しい世代へと歴史の記憶を伝え続けています。上野を訪れる際は、ぜひ細部の造形や周辺の歴史的背景にも注目しながら、その佇まいをじっくりと味わってみてください。