東京・上野恩賜公園の象徴として、国内外から多くの観光客が訪れる「上野西郷隆盛像」。明治の偉人である西郷隆盛(西郷南洲)の銅像といえば、軍服姿で愛犬を従えた凛々しい姿が広く親しまれています。しかし、なぜこの銅像は単身ではなく、犬を連れているのでしょうか。その背景には、当時の制作陣のこだわりや、意外なエピソードが隠されています。
本記事では、上野西郷隆盛像が犬を連れている理由や、愛犬の「犬の名前」の真相、除幕式で妻・糸が語ったとされる驚きの反応、さらに知られざる歴史的背景や見どころまで、2026年現在の視点を交えて詳しくひも解いていきます。
上野西郷隆盛像が「犬を連れている」本当の理由と歴史的背景

上野公園の緑豊かな一角に立つ西郷隆盛像は、明治31(1898)年12月18日に除幕式を迎えました。明治維新の立役者として日本近代化に多大な貢献をした西郷の記念碑を建立するにあたり、当初は威厳ある軍服姿の騎馬像や、正装姿の像が検討されていました。
しかし、銅像の製作を主導した彫刻家の高村光雲や、発起人たちの間では「西郷さんは権威をひけらかすような堅苦しい人物ではなく、自然を愛し、質実剛健を重んじた庶民派のリーダーであった」という共通の認識がありました。そのため、正装で凛と佇む姿よりも、愛犬を連れてウサギ狩り(野良犬や小動物を追う当時流行の遊び)や散歩を楽しむ、最も自然体で親しみやすい姿を表現することに決まったのです。
この設置理由は、明治という新しい時代を駆け抜けた英雄の人間味を後世に伝えるための重要な演出であり、現在に至るまで多くの人々に愛される要因となっています。
銅像の隣にいる犬の名前の真相と「薩摩犬・ツン」の正体
西郷像が連れている犬の名前は、歴史ファンや愛犬家の間でも長年語り草になってきました。その名前は「ツン」です。当時の記録や関係者の証言によると、ツンは鹿児島(薩摩)の人物から西郷へと贈られた「薩摩犬(さつまけん)」の雌でした。
薩摩犬は、険しい山岳地帯でも猪や鹿を果敢に追う優れた猟犬として知られ、非常に賢く忠実な犬種です。西郷は大変な動物好きとして知られており、自宅では多くの犬や猫を飼っていました。その中でもツンは特に可愛がられた愛犬の一頭であり、西郷が狩りに出かけるときにはいつも行動を共にしていました。
なお、銅像のモデルとなった犬については、ツンそのものを直接写生したわけではなく、高村光雲が薩摩犬の特徴を持つ別の犬(または複数の犬)を参考にしながら、西郷の足元に寄り添う忠実な相棒として造形したことが知られています。そのため、「ツンそのものの姿」というよりも「西郷が愛した薩摩犬の象徴」として造形されたのが真相です。
除幕式での妻・糸の反応と、知られざる制作秘話
1898年に行われた盛大な除幕式には、西郷隆盛の妻である「糸(いと)」をはじめ、多くの関係者や市民が参列しました。銅像のベールが取り払われ、その姿が初めて公に披露された瞬間、妻の糸が漏らしたとされる言葉は、今でも歴史のユニークなエピソードとして語り継がれています。
伝えられるところによると、糸は夫の銅像を一目見て、「うちの人は、こげんなお人じゃなかぁ(うちの主人は、こんな人ではありませんでしたよ)」と率直な感想を漏らしたといいます。西郷隆盛は生前、公式な写真を極端に嫌ったため、まとまった写真資料がほとんど残されていませんでした。そのため、制作者である高村光雲は、生存時の数少ない写真や関係者の記憶、さらには西郷の親族(弟の西郷従道など)の顔立ちを組み合わせて銅像を彫り上げざるを得なかったのです。
妻である糸にとって、目の前にある銅像の顔立ちは、日頃見慣れていた夫の生前の表情や面影とはどこか違って見えたの可能性があります。しかし、このエピソードは、銅像が完全な実物の模写ではなく、明治の世の人々が抱いた「西郷像」の精神的な結晶であることを物語っています。
| 項目 | 詳細 | 公式発表・歴史的背景 |
|---|---|---|
| 建立時期 | 明治31(1898)年12月18日 | 上野恩賜公園にて盛大な除幕式が開催される |
| 制作者(像本体) | 高村光雲(たかむら こううん) | 当時を代表する名彫刻家。木彫りの技術をブロンズ像に応用 |
| 連れている犬の名前 | ツン(雌の薩摩犬) | 鹿児島から贈られた愛犬で、狩りを共にした相棒 |
| 除幕式の逸話 | 妻・糸の「こげんなお人じゃなかぁ」 | 写真嫌いで生前の姿が知られていなかったことに由来 |
上野西郷隆盛像の主な見どころと周辺の観光スポット
上野恩賜公園の南西側の高台に位置する西郷隆盛像は、アクセスも良く、上野散策の定番スポットとなっています。実際に現地を訪れる際の主な見どころを整理します。
まず注目したいのは、アングルによる表情の違いです。正面から見上げると、どっしりとした威厳と優しさが感じられますが、少し離れた斜め横や階段の上から眺めると、愛犬ツンを見下ろすような温かい眼差しに気づくことができます。また、像の足元には、ツンが愛らしくちょこんと座っている姿が細部までリアルに表現されており、犬好きの観光客の写真撮影スポットとしても人気を集めています。
周辺には、上野恩賜公園の西郷像だけでなく、不忍池や上野動物園、東京国立博物館など、歴史と文化が凝縮されたスポットが点在しています。銅像を見学した後は、公園の豊かな自然を感じながら散策を楽しむのが定番のルートです。
【上野西郷隆盛像】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:上野西郷隆盛像の作者は誰ですか?
A1:像の本体(人物と犬)は、近代日本彫刻界の巨匠である高村光雲が手掛けました。なお、周辺の台座部分は他の専門家が担当しています。
Q2:西郷隆盛が写真嫌いだったのは本当ですか?
A2:本当です。西郷は「自分の姿を写真に残すことで、権威の象徴のように扱われることを嫌った」と伝えられており、生存時の写真は極めて少なくなっています。
Q3:上野の銅像以外にも西郷隆盛の像はありますか?
A3:はい。出身地である鹿児島県鹿児島市の「鹿児島市中央公園(西郷銅像)」や、霧島市の「霧島温泉市場」などにも異なる姿の銅像が設置されています。
上野西郷隆盛像が犬を連れている理由は、単なる記念碑としての格式だけでなく、西郷自身の親しみやすい人柄や、動物を愛した日常のワンシーンを後世に伝えるための芸術的な工夫によるものでした。愛犬「ツン」の名前や、除幕式での妻・糸の意外な反応を知ることで、ただの観光名所としての見え方が大きく変わり、明治時代の空気感や人間ドラマがより鮮やかに浮かび上がってきます。
東京を訪れた際には、ぜひ上野恩賜公園に足を運び、細部までこだわり抜かれたブロンズ像の表情や、足元に寄り添うツンの姿をじっくりと観察してみてはいかがでしょうか。